2013年2月5日火曜日

ダンシングクイーン(ウィーン自然史博物館)


 ウィーンには数多くの美術館や博物館がありますが、マリア • テレジア広場に建つ「美術史博物館」と「自然史博物館」は双璧を成す施設です。ヨーロッパの他の国にあるミュージアムと比べても、その規模と中味の濃さは群を抜いています。


ハプスブルグ家は、数百年をかけて自然史や美術史に関する貴重なコレクション蒐集に努めました。このコレクションを収蔵するために、19世紀に皇帝フランツ • ヨーゼフ1世が二つのミュージアムを向い合わせで建てさせました。宮殿のような瓜二つの建物に挟まれた広場には、コレクションを始めたマリア • テレジアの巨大な像があり、来訪者をあたたかく迎えているかのようです。



 この双子のミュージアムのひとつ「自然史博物館」は、地球の成り立ち、火山活動、恐竜の世界、人類の出現、鉱物資源、先史時代と、テーマ別に時代を追って遺物などを展示しています。国立博物館ですが、運営は民間に委託されているので、カフェやイベントなどが充実しているようです。

Statuette from Galgenberg
 自然史博物館の展示物で有名なのは、2万5000歳の「ヴィーレンドルフのビーナス」ですが、彼女より7000歳も年上の、3万2000年前の石像もありました。この石像も女性像です。片手を高く挙げて、もう片方の手は太ももにあて、まるでつま先立ちでピルエットをしながら踊っているように見えます。自然史博物館はウィーンの有名な踊り子に因んでFannyと名付けていますが、外国人の私はそんな人を知りません。スポットライトに照らされた石像を見ていると、ABBAの『Dancing Queen』が耳元に鳴り響く感覚を覚え、一緒に踊り出しそうになったので、私は密かにこの踊る石像を“ダンシングクイーン”と名付けました。

ヴィーレンドルフのビーナス
ダンシングクイーン
“ダンシングクイーン”は1988年、オーストリア北西部の町クレムスに近いガルゲンベルグの工事現場で発見されました。そこで最初に発見されたのは先史時代の人骨だったため、丹念な発掘調査が行なわれました。その結果、氷河期のキャンプファイアの跡が見つかりました。そして小さな石の破片などとともに、角セン岩で作られた体長わずか7.2cmの“ダンシングクイーン”が出てきたのです。2008年に南ドイツで象牙の小さな像が発見されるまでは、小像では世界最古を誇っていました。


 石像の踊っているような姿は、トランス状態のシャーマンと考えられていますが、日本風に言うなら「踊る巫女」でしょうか。

 
             
         *「自然史博物館TOP100」を参考にしました。

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