2012年9月2日日曜日

発掘現場のワクワク

 2012年8月12日に 八ヶ岳自然文化園のイベント「遺跡 • 考古館めぐり第3回北杜市周辺」が開催されました。北杜市は富士見町に隣接しているため、縄文時代後 • 晩期の遺跡「金生遺跡」にも「北杜市考古資料館」にも行ったことがありますが、講師である長野県考古学会会長の会田進氏について行くと必ず新しく面白い発見があるので、期待に胸を膨らませて参加しました。

金生遺跡

 期待どおりだったのは、白州町にある発掘中の遺跡見学でした。国道20号線にある白州町は南アルプスの麓にあり、サントリー白州蒸留所があるところで有名です。南アルプス天然水とその水で作った白州ウイスキーの蒸留所見学やバードサンクチュアリでの散策は、当地観光のお勧めスポットの一つです。

 南アルプスから尾白(おじろ)川、神宮川などが白州町内を流れて釜無川と合流しています。(釜無川は甲府盆地を流れて笛吹川と合流し、そこから富士川となって太平洋に至る)。

 尾白川の扇状地にある発掘中の遺跡(縄文時代前期)見学では、北杜市教育委員会学芸員の佐野さんが日曜日でお休みにもかかわらず出向いてきて、遺跡の説明をして下さいました。


説明を聞く一行

 見学の間、なかなか遺跡の名前が出てこないので、私はおもわず「この遺跡の名前はナントいいますか?まだ名前はないのですか」と訊ねましたら、「堰口遺跡」というのだそうです。

   堰口遺跡 


 この縄文時代前期の遺跡は尾白川の氾濫で埋まり、その上に平安時代の遺跡があったので、現在の圃場整理まで見つからなかったとのこと。遺跡の広さは8000㎡あり、65軒の住居址が発掘されました。原村の阿久遺跡に似た遺跡で、阿久遺跡と同じような集石遺構があります。住居は富士見町の藤内遺跡とつながりがあるようで、壁は土ではなく、板を廻らせています。



 この遺跡には特徴が二つあります。一つは遺跡全体に溝が住居をよけてクネクネと掘られていること、もう一つは集石土壙(石がいっぱい詰め込まれている穴)がたくさん発見されたことです。

溝の跡

向こうの川から引き込まれたクネクネ溝


 ワクワクドキドキ。この説明を聞いて、私はたちまちここに住んでいた縄文人の姿を想像しました。川から家のすぐ外まで水を引き、そこに平たい板状の石(板状石も出土している)を据え付けてドングリを調理していました。まずその石の上でドングリを叩きつぶし、水に晒し、土器で煮ながら灰汁抜きをして、柔らかくしたものを焼いた鹿肉で巻いて食べたり、ドングリクッキーにしていたりしました。

BBQの穴(集石土壙)
集石土壙は大抵お墓だと結論づけられるため、「ふん、またそう言うんだろ」と考えていたら、「こうした集石土壙では、多分BBQをしていた」と若手考古学者の佐野さんが話したので、飛び上がらんばかりに驚き、大喜びしました。会田さんも「そうか」と唸りました。考古学界的には、かなり勇気のいる大胆な発言です。日本の考古学の未来は明るいぞと、うれしくなりました。

 縄文時代のBBQは、いわゆる石蒸し料理です。拳大の石を焼いて穴に放り込み、朴葉を巻いた肉を置いて、さらに焼き石を放り込んで蒸し焼きにします。南太平洋の蒸し焼き料理ムームー(パプアニューギニア)やロボ(フィジー)のようなものです。大きな地面の穴を見ていると、縄文人たちの楽しい宴の様子が目に浮かんできました。

 鹿肉も大量のドングリも、北杜市埋蔵文化センターでその証拠を見せつけられ、これで私のワクワクドキドキは完璧なものとなりました。
 
火事になった竪穴住居跡から出土した鹿の角(薄皮が残っている)

出土したドングリ

出土したての遺物を特別に見せていただいた。これは阿久友の会の特典!



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